最終更新日 2024年8月28日
ご相談
製造業を営む株式会社Xは、自身の希望で従業員でなく外注として仕事を行ってきたY(30代・男性)が、仕事中にけがをしたことをきっかけとして、自身は従業員であるとして労災を主張したため、療養補償給付の申請に協力するなどしました。
ところが、その後、Yがユニオンに駆け込み、団体交渉を求めてきたため、もはや自社では対応が困難と考え、顧問社会保険労務士の紹介で、当事務所を訪れました。
当事務所の対応
団体交渉では、①Yの労働者性、②X社の安全配慮義務違反ないし過失の有無、③損害額、④過失相殺などが争点となりました。
とくに、②X社の安全配慮義務違反ないし過失については、安易に認めると、いずれX社に巨額の賠償責任を負わせるおそれがありました。
当事務所は、顧問社労士と協議した結果、仕事の実態からして、①(Yの労働者性)については勝ち目がないと判断して譲歩し、主に②(X社の安全配慮義務違反ないし過失の有無)、③(損害額)、④(過失相殺)に争点を絞ったうえで、ユニオンと粘り強く交渉しました。
とくに、②X社の安全配慮義務違反ないし過失の有無については、Yがその根拠として主張する事実のほころびを追及しました。
ユニオンも徹底抗戦したため、団体交渉は回を重ね、いよいよ交渉決裂、裁判かと思われたとき、ユニオンが県の労働委員会にあっせんを申請してきたため、これを受けることとし、交渉の舞台は、あっせんの場に移りました。
当事務所の対応の結果
当事務所は、あっせんにおいて、委員と十分意見交換しつつ、落としどころを探り、わずか1回の期日で、賠償額を抑えてYに退職していただくとの合意を交わすことができました。
解決のポイント
団体交渉は、通常の交渉と異なり、法律上会社側に誠実交渉義務が課されているため、安易に決裂とはできず、粘り強い交渉が求められます。
また、団体交渉においては、無理筋の主張は紛糾を招くことから、勝負になる争点に絞り、冷静にユニオンの主張に反論する必要があります。
この点、当事務所は、団体交渉の豊富なノウハウに照らし、ユニオンに上げ足を取られないよう、慎重に議論しつつ、ときに会社の言い分を断固として伝えたことが、あっせんでの解決につながりました。