企業による本採用拒否――陥りがちな対応と正しい解決法・予防法
最終更新日 2024年8月28日
雇用契約において、採用後の一定期間を試用期間とする場合が多くみられます。
試用期間とは、長期的な雇用期間となる正規従業員の採用に当たって、入社当初の一定期間は、その労働者の人物や能力を評価する期間とし、使用者が、その間に本採用とするかどうかについての判断をする仕組みをいいます。
本採用後の労働者を解雇することは容易でないことから、本採用の是非を慎重に判断できる点で、企業側にメリットのある仕組みといえます。
では、試用期間を経た後に雇用を継続することが適当でないと判断した場合、つまり本採用を拒否する場合、企業側はどのような点に注意すべきでしょうか。
陥りがちな対応
- 試用期間中の勤務態度があまり良くなかったので、本採用を拒否したい。
- 多めに人を採用した上で、試用期間の結果を見て本採用する人を選びたい。
企業側は、試用期間をいわゆる「お試し期間」と捉え、本採用拒否は自由にできるものと考えがちです。
しかし、このような考え方は大変危険です。
なぜなら、本採用拒否にも一定の限界があり、場合によっては本採用拒否が無効となる可能性があるからです。
また、本採用拒否が違法な解雇にあたるとされた場合には、本採用された労働者として職場への復帰や、賃金の支払を求められるおそれがあります。
正しい方法・予防法
試用期間付きの労働契約は、試用期間中は使用者に労働者の不適格性を理由とする解約権が留保されているものとされています。
ただし、解約権の行使、すなわち本採用拒否は無制限に可能というわけではありません。
本採用拒否は、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在し社会通念上相当として是認され得る場合にのみ可能とされています。
具体的には、「企業側が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務態度等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合」と、されています。(最大判昭48・12・12)。
このように、本採用拒否にも限界が存在し、本採用拒否の理由によっては、本採用拒否が無効とされる可能性があります。
トラブルを避けるためには、当初から一定の人数の本採用拒否を予定する方法は避けるべきといえます。
また、試用期間に関する就業規則を充実させ、本採用拒否をする代表的な事項について定めをおくことが望ましいでしょう。
本採用拒否の可否や就業規則の定めに関しては、労務に強い弁護士へのご相談をおすすめします。