御社も未払残業代を請求されるかもしれません【経営者向け】

未払残業代を請求されるかも

 

突然ですが、経営者の皆さん、社員が残業した場合、もちろん残業代を支払ってあげていますよね?

 

A社:もちろん支払っているが、管理職には支払っていないよ

B社:もちろん、残業代込みの給料を支払っているよ

C社:もちろん、決まった残業手当を付けているので大丈夫だよ

 

これらは、いずれも当事務所がよく目にする対応です。

しかしながら、A~C社の対応は、いずれも極めて危険であり、社員から未払残業代を請求されるおそれがあります!

え、そうなの?という声が聞こえてきそうですが、本当です。

 

そして、未払残業代は、時効の関係で遡って2年分しか取られないので、社員1人分であれば何とか支払えるのですが、怖いのは、

①同じ状況の社員から一斉に請求されると高額に上る

②裁判では未払の割増賃金と同額の付加金も取られる、つまり最悪2倍のお金を取られるおそれがある

ため、場合によっては経営が傾くことさえある点です。

 

しかも、近時、最高裁判決が、高給取りの医師についても、従来の裁判例を踏襲し、残業代がちゃんと支払われているか確認すべきと改めて判断したことが大きく報じられたため、今後、未払残業代請求が頻発するおそれがあるのです。

そこで、今回は、A~C社の対応がなぜ極めて危険なのかご説明し、未払残業代請求を防ぐために何をすべきかをお伝えしたいと思います。

 

・A社(残業代は支払っているが、管理職には支払っていないケース)

経営者の間でよくある誤解が、「管理職なら残業代を支払わなくていい。」というものです。

労基法に管理監督者を労働時間の規制から除外する規定があることから、こうした誤解が生じたのでしょう。

ですが、労基法に言う管理監督者とは、労働条件の決定その他労務間について経営者と一体の立場にある者とされています。

平たく言えば、管理監督者というのはほとんど認められない、ということです。

この点、A社の場合は、管理職に残業代を支払っていないとすると、いずれ未払残業代を請求されると思って間違いありません。

しかも、その時は、平社員ではなく、通常高いお給料の管理職の残業代となりますから、なおさら高額に上ることでしょう。

 

・B社(残業代込みの給料を支払っているケース)

B社のように、「うちは残業代込みの給料を支払っているよ、その分給料を高くしているから。」という会社は多いです。

しかし、これも未払残業代の請求を受けるおそれ大です。

先ほどの最高裁判決は、残業代込みの給料自体は認めていますが、残業代込みの場合、「通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別できることが必要」と判断しています。

なぜなら、通常の労働時間の賃金部分がはっきりしないと、割増賃金部分が十分な額なのかどうか判断できないからです。

この点、B社は、残業代込みの給料を支払っているということですが、もし通常の労働時間の賃金部分と割増賃金部分の区別などしていないとすれば、残業代が十分支払われていないとして、未払残業代請求を誘発するおそれがあるのです。

 

・C社(定額の残業手当を支払っているケース)

では、定額の残業手当を支払っているC社の場合はどうでしょうか。

残業手当という形で、割増賃金部分が通常の労働時間の賃金部分と区別されている点は、問題ありません。

しかしながら、たとえば、残業手当が1日2時間分しか支払われていないのに3時間残業させているとすれば、1時間分残業代が足りないということになります。

その不足額を別途支払ってあげていれば問題ないのですが、もし支払っていないとすると、やはり未払残業代請求を受ける恐れがあるのです。

 

いかがですか?

ドキッとした経営者の皆さんも多いのではないでしょうか。

では、A~C社が未払残業代を請求されないようにするには、どのような対策を講じたらよいかですが、

 

A社:管理職でも残業代を支払う

B社:給料のうち通常の労働時間の賃金部分と割増賃金部分を分ける

B、C社:通常の労働時間の賃金部分をもとに残業代を計算すると残業代が不足する場合は、その不足額を支給する

 

ということに尽きます。

そして、場合によっては就業規則の変更も必要でしょう。

ただ、こうした対策は、日ごろ本業で忙しい経営者の皆様にはご負担かと思います。

そこで、今回のメールを読んで心当りのある経営者の皆さんは、急ぎ労務の専門家に相談することをお勧めします。

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
開所以来、姫路エリアに密着。使用者側労働問題に注力。経営法曹会議会員。

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