企業の倒産――従業員の処遇は?

企業の倒産

最終更新日 2024年8月28日

  • 「会社が倒産することを、いつ従業員に伝えよう・・・」
  • 「給与が支払えそうにないが、どうしたらよいのか・・・」

企業が倒産してしまった場合、経営者としては、まず従業員への対応に頭を悩ませることでしょう。

では、企業が倒産した場合、従業員の処遇はどうなるのでしょうか。

解雇の時期をいつにするか

会社が倒産する場合、そのことにより当然に従業員が解雇されるというわけではなく、通常は、破産申し立て前に解雇がなされます。

解雇は「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として是認できる場合」であることが要件とされますが(労働契約法16条)、企業の倒産は右要件を満たすものと考えられます。

ただし、倒産の経緯や、倒産せざるを得ない事情、解雇の条件などについて従業員への説明が不十分な場合、すなわち、手続的配慮を著しく欠く場合は、「社会通念上相当として是認」されず解雇権の濫用とされる余地があることに注意が必要です。

解雇の時期について、事前に情報漏えいのおそれがあり破産申し立てに支障が出る場合や、破産管財業務の遂行に従業員の協力が必要となる場合には、破産申立後に行う場合もあります。

この場合、解雇は破産管財人によってなされることになります。

倒産による解雇にも、解雇予告義務の適用あり

企業の倒産による解雇の場合にも、解雇予告義務(労基法20条)の適用があります。

したがって、企業は少なくとも解雇の30日前にその予告をしなければならず、30日前に予告をしない場合は30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。

したがって、破産等の申立てと同時に従業員に通知する場合は、未払賃金と併せて解雇予告手当も支払う必要があります。

この点を踏まえると、従業員に伝える時期は解雇の1ヶ月前とすることが望ましいように思えますが、前述の通り、情報漏えいなどで申立に支障が出る場合には、解雇予告手当を支払うことを前提に、申立当日に伝えるとするのがよいでしょう。

未払賃金等の支払は慎重に

破産申立には、予納金などの手続費用がかかります。

したがって、破産申し立て前に企業が従業員に対し未払賃金等を支払う場合は、これら費用を確保しておく必要があります。

破産申立後は、従業員の未払賃金等は破産財団から支払われます。

労働者保護の見地から、未払賃金等は手厚く保護されています。

具体的には、未払賃金等は他の債権に優先して破産財団から支払われ、財団からの支払ができない場合は、賃金支払確保法により、国が未払賃金の一部を立替払する制度があります。

企業倒産に関する従業員の処遇は、弁護士に相談を

このように、企業が倒産する場合、従業員の処遇に関する問題は、経営者限りでの判断が難しい部分もありますので、労務に強い弁護士への相談をおすすめします。

最終更新日 2024年8月28日

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
開所以来、姫路エリアに密着。使用者側労働問題に注力。経営法曹会議会員。

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