退職勧奨――陥りやすい対応と正しい解決法・予防法

退職勧奨―

最終更新日 2024年8月28日

勤務態度の悪い問題社員に辞めてもらいたい。

経営悪化に伴い、人員を削減したい。

このような理由で、企業から労働者に対し、辞職を求めたり、早期退職者の募集をしたりすることがあります。

このように、企業が労働者に対して、労働契約の合意解約を申し込み、または申込みの誘引をする行為「退職勧奨」といいます。

企業側が退職勧奨をするにあたって、どういった点に注意すべきでしょうか。

 

陥りやすい対応

解雇となると手続が大変だから、何とか任意に退職してもらいたい!

このように考え、時に企業側は退職勧奨に熱が入ってしまいがちです。

しかし、こういった退職勧奨は、実はかなりデリケートで場合によっては大きなリスクを伴います。

なぜなら、行き過ぎた退職勧奨は不法行為に当たるとして損害賠償請求の対象となるおそれがあるからです。

たとえば、労働者に対し「お荷物的存在」などと侮辱的な表現を用いて退職勧奨を行ったケースでは、使用者側に400万円もの慰謝料の支払いが命じられています(東京地裁平成15年7月15日)。

 

正しい解決法・予防法

退職勧奨を行うこと自体は、労働者の任意を尊重する態様で行われる限り、原則として企業の自由です。

ところが、退職勧奨の手段・方法が社会通念上の相当性を欠く場合には、「退職強要」として不法行為を構成し、企業が労働者に対して損害賠償責任を負ったり、退職強要に基づいてなされた労働者の合意退職の申込等が無効になったりします。

退職勧奨が社会通念上の相当性を欠くか否かは、具体的には、

  1. 退職を迫った行為の態様や表現方法、
  2. 企業側の意図、
  3. 企業側の行為の頻度や期間、
  4. 労働者が退職を余儀なくされた理由が専ら企業側の行為にあるかどうか、等の事情から判断されます。

したがって、企業が脅迫的な表現を用いて退職を迫る場合や、企業の退職勧奨が労働者に対する嫌悪に基づく場合、労働者が退職を拒否しているにもかかわらず執拗に呼び出して勧奨する場合などは、違法となり得ます。

他方、企業と労働者が継続的に話し合いを行っていた場合や、企業が労働者に対し、退職した場合の利害得失を説明していた場合などは、退職が労働者の自由意思に基づくものとして社会通念上の相当性が認められやすいでしょう。

このように、退職勧奨は、その方法に十分配慮が必要です。
退職勧奨を行う場合には、あらかじめ労務に強い弁護士に相談し、退職強要に陥らないような方策を講じておくことをおすすめします。

最終更新日 2024年8月28日

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
開所以来、姫路エリアに密着。使用者側労働問題に注力。経営法曹会議会員。

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